江戸っ子とは・・・その弐
生涯アルバイター
とにかく、江戸っ子といえば怠け者の代名詞のように働きたがりません。
もっとも、諸物価が安かったので、月のうち半分も働けば、十分女房子供を養えます。
身ひとつあれば、いつでもバイトができました。女房が、「お前さん、お米が一粒もないよ」
と言えば、外へ出て「米つこうか、薪割ろか、風呂焚こうか」と言いながら歩けば、
どこかの家からお呼びがかかります。
また、坂の下へ立っていれば、日に何度か重い荷車が通りますから、その後押しを手伝う・・・
これもバイトです。女房が、「扇の地紙売りがカッコイイ」と言えばさっそく始めたりもします。
町で見かけた物売りの中でやってみたいものがあれば、その人に聞くと親方の所へ連れて行ってくれます。
そこで商売道具を一式借りて、その日から商いに出ることができます。
途中すれ違った物売りの荷物が軽そうだと言っては乗り換え、売り声の節回しが気に入ったと言っては
転職しました。中でも呆れたバイトは、素人の医者・・・当時のお医者さんは無免許でなれましたし、
剃髪していたので「髪を結うのが面倒になったから医者でもやるか」とか言って、
頭を丸めて開業するんですからヒドイものです。こういうヤブは、飽きると幇間(男芸者)になったり、
易者をやったり、果ては坊さんもやってまた、医者に戻るなんてことも平気だったそうですから
コワイですね。
・・・どうしょうもない・・・と思うかもしれませんが、私は、そうは思いません、
江戸っ子には、天性の明るさがありました。人情も・・・
6割働いて、残りの4割は、助け合い・・・
貸したり、返したり、もちつもたれつ・・・
また、自分の選択だからこそ、貧乏したって、卑屈になることは、少しもなかったのです。
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